楽園マーケティングしていませんか?
自分の会社を立ち上げたので、これからは自分の知見や見解を、今まで以上に発信していきたいと思います。
というわけで初めての投稿は、私、香月事務所代表の香月勝行が、以前から思っていた通販マーケティングで最もよく起きる失敗パターン、「楽園マーケティング」について書きたいと思います。
みなさんが、ものを売るための広告を作る際に、一番重要視していることは何でしょうか?企画内容、コンセプト、スタッフィング、売上目標値、あるいは制作費など、さまざまな重視すべきポイントが挙げられると思うのですが、私が最も大事だと思うのは、何にも増して「ポジショニング」です。この話は、楽園マーケティングを考える上で非常に重要ですので、まずはその話から始めたいと思います。
ポジショニングとは…
ポジショニングとは、市場における商品の立ち位置のこと。ここで言う「市場」や「立ち位置」というのは、消費者の脳内におけるものを意味しています。
そして、多くの場合その立ち位置は、価格帯や特徴などの2軸で表した平面(本稿ではこれを「ポジショニングマップ」と呼ぶことにします)で表現されます。そこに競合商品もプロットすると、自ずと自社商品と他社商品が、消費者からどのように見られているかの関係性が分かるわけです。
ちなみに余談になりますが、消費者の脳内での捉え方を適切に把握するのは、実は意外と難しいです。前職時代の経験で言うと、男性の新入社員にスキンケア商品のポジショニングマップを書かせても当然ながら全く書けませんし、車に興味がないマーケターにスポーツカー市場のポジショニングマップを書かせても、そもそも軸の設定から分からなかったりします。
つまり、消費者の脳内での商品の位置付けを把握するには、ある程度消費者と同じレベルの知識や関心、ニーズを身に付けていなければならないのです。
ポジショニングマップの利点
で、そんなポジショニングマップ、これを作る最大の利点はと言うと、競合商品に対してどのようなポジションを取れば優位に戦えるかを導き出せることです。
例えば、同じスペックで価格も同じという競合とまる被りしたポジションになっている、ということが判明したのであれば、価格を下げる(もしくはスペックを高める)ことで優位に戦う作戦が導かれますし、あるいはマップ上に競合商品が全くないゾーンが見つかれば、そこに進出することでブルーオーシャンの戦いをするという作戦が見つかるわけです。
私たちがマーケティングを行う際、99%以上の場合において、なんらかの競合商品がある中での戦いとなります。つまり、ほぼ全てのケースで、敵との関係性を考慮しながら戦わない限り、勝ちが手に入ることはありません。ましてや、一つのジャンルに商品が溢れかえり、しかもその差は消費者から見てもほとんどわからないようなものばかりとなっている現代市場では、自社商品の強みだけでなく敵の弱みも見極めて、セコく賢く戦うことが、勝つために不可欠となっているのです。
そのための作戦を考える上での“戦場の地図”となるのが、まさにポジショニングマップです。だからこそ私は、モノを売るための広告を作る際に、このポジショニングの考え方を最重要視しているわけです。
対して、楽園マーケティングとは…
そんなわけで、今日のテーマの「楽園マーケティング」のお話です。この方法は、ポジショニングマップを作って敵の位置を知り戦いを優位に進める、というやり方の対極にあるもので、敵が一人もいない楽園の島で商売をしているかのようなマーケティングを指します。
敵がいない島で、そこの住民にモノを売るわけですから、競合との差別化を気にする必要はありません。売る人は、ただひたすら自分たちが思う商品の優れた点を言えば、必要な人たちがどんどん勝手に買ってくれる、つまり、言いたいことを言いさえすれば売れる、まさに楽園のようなやり方が「楽園マーケティング」です。
現実は、ド競合の市場なのに…
先ほども書いたように、現実の市場はほぼ全て、至る所に敵がうじゃうじゃ存在した、楽園とは大違いのド競合の市場です。こんな中で楽園マーケティングが成立するなんてあり得ない、ということは誰が考えても当たり前です。そうなんです、「楽園マーケティング」って名前はパラダイス感満載ですが、実態としては決してやってはいけないマーケティングのあり方なのです。
にも関わらず、にも関わらず、現実的にはかなりの割合で、現在のド競合市場の中でも楽園マーケティングが行われています。すなわち、敵がどこにいてどんな特徴を持っており、自社と比較して何が優れていて何が弱みなのかを全く考えずに、ただひたすら自分たちが思う商品の優れた点を言う広告を作っては配信している、というケースが非常に多く見られるのです。これでは、当然商品の良さは理解されにくいし、結果的に広告制作費も媒体費も無駄な投資になってしまう可能性が非常に高いですよね。
楽園マーケティングに陥らないために
もしもあなたのパートナーが、ポジショニングも考えずにいきなり表現手法を語り出したとしたら、その施策は楽園マーケティングに陥っている可能性が非常に高いと思います。そんな場合は、一刻も早く、市場を正しく捉える経験値を持ったスタッフをチームに加えることをお勧めいたします。なぜなら、市場を正しく理解できないチームに、勝てる作戦を導き出すことは、まず無理だからです。
なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?原因は、広告を担当する人の市場の理解度の高低にあると思います。市場を正しく捉えている人ほと、敵の位置、規模、強み/弱みも見えています。そうなれば当然、敵の戦力を踏まえた戦い方を考えるはずでしょう。
ところが、市場が正しく捉えられていない場合はどうでしょうか。敵の状況に関わらず常にワンパターンの戦い方、すなわちただひたすら自分たちが思う商品の優れた点を言う広告を作るしかなくなります。そうなると勝つ見込みも低くなってしまうことは、言うまでもありません。つまり、勝てる作戦を導き出せるか否かは、市場の理解度合いと直結しているのです。
この事実から言えること、それは、勝ちたいのであれば、市場を正しく捉える力のあるマーケター、クリエイター、運用担当者と組むことが、何よりも重要だと言うことです。
逆に言えば、チームが市場を正しく捉えられるようになれば、勝つチャンスは自ずと高まります。私も、そのようなチームを作るための力になれるように、これらかも経験値を積んでいきたいと思います。